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Trailer
予告編

世代を超えた豪華キャストによる本気の芝居合戦。
Introduction

市川進、御年74歳。彼は巷で噂の伝説のヒットマンだ。……というのは、まったくの嘘!
本当の正体は、理想のハードボイルドを極めるただの小説家だった!――

日本映画界を代表するバイプレーヤーの石橋蓮司が、阪本順治監督(『大鹿村騒動記』『半世界』)の熱いラブコールを受けて19年ぶりに78歳で映画に主演。ハードボイルド・スタイルで夜の街をさまよう、完全に“時代遅れ”の主人公を渋く、そしておかしみたっぷりに演じる。

共演には、妻役の大楠道代をはじめ、夜な夜な市川のもとに集まる怪しげな友人役に岸部一徳と桃井かおり。「探偵物語」の丸山昇一が描く最高にしゃれたオリジナル脚本を得て、実力派レジェンドたちの夢の共演がここに実現した。
本作の魅力はそれだけではない。いまや日本映画を牽引する主演級の役者陣もこぞって参加。佐藤浩市、豊川悦司、江口洋介、妻夫木聡、井上真央、さらに柄本佑、寛 一 郎など
「令和」を担う若き俳優たちなど世代を超えたガチの演技合戦も見物だ。

人生最期の究極の「こだわり」を“かっこいい”とするか“悪あがき”と呼ぶか――。
いまだ青春時代を忘れられない大人たちの、“おかしみ”と“愛らしさ”たっぷりな“ハード(ト)ボイルドコメディ”が、2020年ゴールデンウィークに”心を撃ち抜く“映画になること間違いなし!

Story
ストーリー

市川進、御年74歳。
タバコ、トレンチコートにブラックハット…

大都会のバー「Y」で旧友のヤメ検エリート・石田や元ミュージカル界の歌姫・ひかると共に夜な夜な酒を交わし、情報交換をする。

そう、彼は巷で噂の“伝説のヒットマン”だ。
今日も“殺し”の依頼がやってきた――。

がしかし本当の姿は…ただの売れない小説家。

妻・弥生の年金暮らし、担当編集者の児玉からも愛想をつかされている。

物語のリアリティにこだわり過ぎた市川は“理想のハードボイルド小説”を極めるために、密かに“殺し”の依頼を受けては、本物のヒットマン・今西に仕事を頼み、その暗殺の状況を取材しているのだった。

そんな市川に、ついにツケが回ってきた。

妻には浮気を疑われ、敵のヒットマンには命を狙われることに!

ただのネタ集めのつもりが、人生最大のピンチ。

“一度も撃ったことがない”伝説のヒットマンの長い夜が、始まる。

Comment
コメント

宮崎 哲弥評論家

日本人もハードボイルドが板に付いてきた、と言われた時代があった。ほんの一瞬。無口で、バーの片隅にいて、警句をポツリと漏らす。連帯を求めて孤立を恐れず……か。そういう生き方に憧れた夜々があった。そんな映画だ、これは。石橋蓮司さん、ありがとう。

村上 淳俳優

映画とは。この問いに全世界が揺れている。しかしこの小さな日本でその問いに対してのひとつのアンサーがうまれた。“かっこいい”とはという問い。この問いにも雷のようなアンサー。四人の”かっこよさ”。それは理屈ではなく生き様だと僕は興奮した。大技と小ネタが散りばめられた傑作。邦画のど真ん中とは阪本順治監督である。

内田 春菊漫画・作家

石橋蓮司さんはなんていい声なんだろう 。もしあんな声を出してたら、田舎の商店街のオヤジさんだって ハードボイルドな人に見えるに違いない!言い間違いまで演出されているなんて、どんだけ!?細部まで行き届いた大人の作品ですね!小説とは?物語とは?主人公の小説、本当は面白そうな気がするのですが!?わ 、私も小説書かなくちゃ!!

加藤 伸吉漫画家「国民クイズ」「バカとゴッホ」

たたずまい丸ごとが石橋蓮司さんのような映画です!

荒井 晴彦脚本家・映画監督

黒澤満の匂いがした。これは、松田優作の『探偵物語』のスピンオフなのかも知れない。

終わって、in memory of Mitsuru Kurosawa と流れたような気がした。

吉村 界人俳優

横をみると、今の僕らの世代は皆んな芝居が達者で、皆んな綺麗な仮面の様だと思っている次第ですが、やはりスクリーンではその人にしかない実人生から宿っている風情とか隠しきれない一瞬の面構えに、人は心を奪われるんだと思いました。
おこがましいですが、僕はまた、無鉄砲な強い志をもちました。

小堺 一機

諸先輩!カッコいい!
僕等世代が憧れた世代の役者の香りを思いっきり吸い込む幸せ!
このカッコ良さを笑う若者よ、今にわかるよ!

ヴィヴィアン佐藤ドラァグクイーン

日本史上最強のカルト映画!!!豪華出演陣!!!こんな映画見たことない!?
主役級の役者だけで作られる大人の悪戯の完璧なお手本が完成!!!

李 相日映画監督

阪本監督にしか出せない味がある。
蓮司さんと一徳さん、大楠さんに桃井さん…
伝説の名優たちのダシは超絶品。
おでんは染みた大根に限る!

Character
人物相関図

なんちゃってヒットマン市川を取り巻く個性豊かな登場人物たち

監督:阪本 順治

1958年生まれ、大阪府出身。大学在学中より、石井聰亙(現:岳龍)、井筒和幸、川島透と いった“邦画ニューウェイブ”の一翼を担う監督たちの現場にスタッフとして参加する。89 年、赤井英和主演の『どついたるねん』で監督デビューし、芸術推奨文部大臣新人賞、日本 映画監督協会新人賞、ブルーリボン賞最優秀作品賞ほか数々の映画賞を受賞。満を持し て実現した藤山直美主演の『顔』(00)では、日本アカデミー賞最優秀監督賞や毎日映画コ ンクール日本映画大賞・監督賞などを受賞、確固たる地位を築き、以降もジャンルを問わず 刺激的な作品をコンスタントに撮り続けている。2016年には斬新なSFコメディ『団地』で藤山直美と16年ぶりに再タッグを組み、第19回上海国際映画祭にて金爵賞最優秀女優賞 をもたらした。その他の主な作品は、『KT』(02)、『亡国のイージス』(05)、『魂萌え!』(07)、『闇の子供たち』(08)、『座頭市THE LAST』(10)、『大鹿村騒動記』(11)、『北 のカナリアたち』(12)、『人類資金』(13)、『ジョーのあした─辰𠮷𠀋一郎との20年─』(16)、『団地』(16)、『エルネスト』(17)、『半世界』(19)などがある。

阪本 順治

Director Interview
監督:阪本 順治インタビュー

―今回のストーリーは、丸山昇一さんの「伝説の殺し屋。実は一度も人を撃ったことがない」という一言から生まれたそうですね? 阪本 : 雑談で「石橋蓮司さんの主演作というのは、どうですかね」と僕が言ったときに、丸山さんが「こんな企画がある」と即答したんです。すぐに面白いと思いました。それで企画が動くと丸山さんは、まず短いプロットと各登場人物のバックグラウンドを書いてこられました。

―その時点で石橋さん以外のキャストは決まっていたんですか? 阪本 : 原田芳雄さんの家で蓮司さんの映画を作ろうと盛り上がった時、桃井さんや岸部さん、大楠さんがいて、佐藤浩市君や江口洋介君もいたんです。だからこのメンバーには出てもらえるだろうと。当然そこには当人の蓮司さんもいて、「ふーん」とか「へぇー」とか言っておりましたが。他にも企画を聞きつけて柄本明さんや柄本佑君が「おれたちも!」と声を上げてくれ、のちに豊川悦司君や妻夫木聡君、井上真央さん、小野武彦さん、渋川清彦君、前田亜季さんなども、次々と参戦してくれました。すべては蓮司さんのお陰です。寛 一 郎君はある飲み会で佐藤浩市君が、「寛 一 郎を起用したら、親子三代を演出したことになるぞ」と言ってきて。「大鹿村騒動記」で浩市のお父さん、三國連太郎さんに出てもらっていますからね。浩市がそう言ったということは共演してもいいということだと思って、出版社編集部の上司と部下の関係で共演してもらったんです。勿論、寛 一 郎君が嫌だと言ったらそれまででしたが。寛 一 郎君と共演した浩市は現場でちょっと照れくさそうで、緊張が見えましたけれど(笑)。ただどの俳優にも、友情出演とかカメオではなくちゃんとそれぞれの役に意義を付けようと、丸山さんは脚本作りで苦労されました。

―主演として現場に臨む石橋さんは、いつもと違っていましたか? 阪本 : 原田芳雄さんも「大鹿村騒動記」の時に、それまで準主役や脇役で出てもらったときとは違って怖かったんです。主演俳優(座長)と監督とのコミュニケーションは独特ですね。蓮司さんも今回は出ずっぱりであるとか、架空性の高い役柄なのでセリフ一つ言うのも、そのパフォーマンスも自由度が高い分、逆に難しかったようで、相当ストレスをため込んでいた感じでした。後で聞いたら、「2日目の夜に、俺はダメかと思った」と。寒い時期の撮影で体もきついし、翌日自分がやるページ数も多いし。だからいつもはそんな人ではないですが、蓮司さんに一度「安易にポンポン撮ってるんじゃねぇよ」って怒られました。「ポンポン撮ってませんよ」と言い返しましたけど(笑)。でもあの年齢で銃の捌きができて、トレンチコートやサングラスが似合う人はなかなかいない。演じた市川はおそらくハンフリー・ボガートの映画なんかに憧れて、その中の登場人物になったような錯覚をついついしてしまう人なんです。つまり、生粋の映画ファン。それが様になるのは、映画の中で膨大な時間を過ごしてきた蓮司さんだからだと思います。

―桃井かおりさんとは初めてですね? 阪本 : 30年近い知り合いですが、仕事は初めてでした。桃井さんもそうですがこれだけのベテランが揃うと、こちらはト書きが脚本通りでも、その中でやってもらうパフォーマンスは、俳優が想像していた以上のものを提案しなくては太刀打ちできない。舐められてしまう。でもそこは、甘え上手な私。どんなトリッキーなことを言っても受け止めてくれると思っていたので、「うるさいな、お前」って言われるくらいに注文しようと思いました。例えば桃井さんの初日は立ち食いそば屋で働いているシーンでしたが、脚本では立ち食いそば屋の前を市川が通ると、奥の厨房で桃井さん演じるひかるが働いているのが見えると。でもロケハンに行くと外から厨房が見えないので、設定を店の中にしてね。カウンターとてんぷらを置いているガラスケースのすき間から桃井さんが顔を出すことにしました。桃井さんは面白がってくれたと思います。あそこで僕は桃井さんが注文してからそばを出すまでの秒数を呟いてくださいと蓮司さんにお願いしたら、蓮司さんは「ゆであがりまで28秒」とアドリブで返してきて。そういう遊びが即時にできるのが、この方たちの技量ですね。

―岸部さんや大楠さんの印象は? 阪本 : 岸部さんは『Y』のカウンターで桃井さんを「一度やらせてえな」と口説いていると、嫉妬した新崎人生君演じるポパイが二人の間に入ってきてボトルをドンと置きますよね。あのとき岸部さんは驚いたような顔して、一度カメラの方を向くんです。ほとんどカメラ目線のリアクションを、瞬時にするのはすごいなと思い、笑いを堪えるのが大変でした。段取りではなく、抜群のユーモア感覚ですね。大楠さんは夫の市川に全部ごまかされ、夜のすがたや交友関係を知らずにいるという、ひとり置いてけぼりにされたような孤独感を感じさせる妻の役です。朝方帰ってきた夫を責め立てるところは、大楠さんならではの凄みがありました。あ、この人、本気で怒ってるわ、と。メインの4人はずっとずっと昔からの仲間なんですよ。普段の付き合いがあるから、皆さんが揃うと予期せぬものが出てきて面白い。いや、おかしい。

―石橋さんの主演作を撮り切った感想は? 阪本 : 群像劇の難しさとか、この架空性の高い世界観の中で誰一人浮かずに描ききることの難しさはありましたけれど、僕は非常に楽しかったです。自分が還暦を過ぎて、これからどんな映画を作っていくのか。やはり少年時代から助監督時代まで、自分が映画を観ていた時にスクリーンでしか見られなかった人たちとこれからもやっていきたい。そんな人たちから見れば、自分は所詮若造ですが、それを逆手に、これからもやっていきたいと改めて思いました。そのためにはまずは蓮司さんに元気でいてもらわないと。

脚本:丸山 昇一

1948年生まれ、宮崎県出身。日大芸術学部映画化卒業。会社員、フリーのCMライターを経て、1979年、テレビ「探偵物語」「処刑遊戯」(80年)、『すかんぴんウォーク』(84年)、『ふたりぼっち』(88年)、『いつかギラギラする日』(92年)、『凶気の桜』(02年)など。阪本順治監督とのコンビ作品は『傷だらけの天使』(97年)、『カメレオン』(08年)、『行きずりの街』(10年)があり、今作が4本目の作品となる。

丸山 昇一

Screenwriter Interview
脚本:丸山 昇一インタビュー

―「人を撃ったことがない伝説の殺し屋」というのは、丸山さんの発想だそうですね? 丸山 : その設定を阪本監督に言う2年ほど前に、もう引退しても構わないオールドボーイの殺し屋と、精神病棟に入院して、そこから通っている若い刑事を主人公にしたアクション・コメディを考えていたんです。その殺し屋のイメージが石橋蓮司さんでした。阪本監督から石橋さんの主演作をと言われたときに、そんなイメージからかフッと、一度も銃器を発砲したことがない伝説の殺し屋というのが浮かんできて。阪本監督には「丸山さん、いつも変なこと考えますね」と言われましたけれど(笑)。

―やがてその企画が動いてから、どのように脚本にしていったんですか? 丸山 : まずどんなお話になるか、1週間で考えてくれますかと監督に言われて。考えたものを監督に見せたら、大体基本線はこれでいいけれど、細かいところを修正しましょうと。またその時に、脚本が面白ければ桃井かおりさん、岸部一徳さん、大楠道代さんに出ていただける可能性が高いと言われて、そのお三方に石橋蓮司さんの組み合わせだったら、よだれが出そうでしたよ(笑)。お三方を加えたことで物語の骨格は同じですけれど、中身は変わっていきました。

すぐに画が浮かんだんです。新宿のような歓楽街の明け方に、その4人がワーワー大声で言いながら歩いてきて、街灯に照らされたコート姿の4人の影が歩いていくという。みんないい歳なんだけれど、全然気持ちは萎えていない。その僕が思い描いたそのイメージを、監督はラストにちゃんと撮ってくれました。4人が決まると、さらに役に当て書きしましたね。だからこの脚本は僕から4人のスター俳優へのファンレターなんです。

―石橋さん主演ということで、脚本を書くにあたって意識されたところは? 丸山 : 石橋さんはハードボイルドもコメディもやれる方なんです。ここでは午前零時になるといきなりハードボイルドになって、朝には平気でゴミ出しをするおじさんになる。それが一人の人間としてナチュラルに演じられる稀有な俳優さんなんですよ。だからごく普通の呼吸をして日常を送っている人物が、何かの拍子でハードボイルドになるという、人間の表と裏、光と影をね。面白おかしく描こうと思いました。あと意識したのは、石橋さんは沢山の演技の質や表情を持っていますけれど、それを全部出すような主人公にして、観終わったときには「こんな石橋蓮司、初めて見た」というものができないかなと思いましたね。

―石橋さん演じる市川と玉淀ひかる(桃井かおり)、石田和行(岸部一徳)は、半世紀近く友情で結ばれていますね? 丸山 : だからこれは、50年続いている青春映画なんです。3人には友情や親近感などフレンドリーなものがありますし、一方では互いを嫉妬したり、嫌になったりする部分もある。またひかるを挟んで、ちょっとした恋心も抱いていたりね。そういうことは青春時代と変わらなくて、たまたま年月が過ぎただけだと。そこに1シーンだけでもいいから、お客さんが共感していただければ嬉しいです。

―大楠道代さん演じる弥生は、その青春の中には入らないんですか? 丸山 : 彼女は昔教師で、本屋へ参考書を買いに来た時に市川がサイン会を開いていて、誰もお客がいないから編集者に頼まれて、サイン会に参加したんです。その時弥生は初めて作家のサインをもらった。それで帰りに駅のホームで電車を待っていると、市川が一人でベンチにいる。その寂しそうな姿に惹かれて声をかけて、やがて夫婦になった。でもまさか、それから30年も夫を食わせていかなくてはいけないと思わなかったでしょうけれど(笑)。それもまた青春じゃないですか。弥生が朝方帰ってきた市川に、「あなた、何やってんのよ」と凄むところがあるでしょう。それだけ愛情をもって接してきたのに、あなたは何をやっているのと。私の青春は何だったのという想いが、あそこに出ているんです。あの怖さは大楠さんにしか出せないですよね。またあの場面があるから、ラストの『Y』で夫の違う一面を観た時の驚きも活きるんですよ。

―阪本監督とは4本目のコンビですね? 丸山 : 阪本監督は男の心情や在り方。情けなくて格好がつかない男というのを、よく表現してくれます。それで毎回1シーンだけ、かっこいいよねというところをちゃんと撮ってくれるんです。今度で言えば最後に市川が『Y』に入ってくるところ。それまで格好がつかないことが沢山あったけれど、彼は店に入っていかなくてはいけない。その一瞬のかっこよさ。あそこで蓮司さんがなぜトレンチコートを着てソフト帽を被っていたのかがわかるんです。ああいう1ショットがあるから、いつも僕は阪本組に参加してよかったと思うんですよ。これはいい歳をしてまだ馬鹿をやっている男女を描いていますが、かつて映画館の中では不良だった多くの大人たちにね。その遊び心を忘れないで欲しいという。そんな気持ちを込めて描いた作品なんです。

RENJI
ISHIBASHI

石橋 蓮司 市川 進/御前 零児 役

1941年 生まれ 東京都出身。「劇団若草」、「劇団青俳」、「現代人劇場」などを経て、現在「劇団第七病棟」主宰。演劇、映画、テレビにおいて、強い個性と演技力で異彩を放ち、 ユーモラスな父親や理知的な会社重役、弱小ヤクザの組長、居酒屋の店長、ベテラン刑事や総理大臣までもこなし、幅広い役柄で存在感を示している。降旗康男、熊井啓、市川崑といった日本映画界の巨匠達の作品の他に、阪本順治、 三池崇史、行定勲、堤幸彦、北野武といった次世代の才能との出会いが続き、彼らの作品でも半世紀に渡る長い経験に裏打ちされた、確かな演技で高い評価を得、無くてはならない存在になっている。 このたび本作が、02年『黄昏流星群 星のレストラン』以来、 18 年ぶりの主演作 となる。出演作に64年『狼と豚と人間』、桃井かおりのデビュー作ともなった主演作、71年『あらかじめ失われた恋人たちよ』、 74年『竜馬暗殺』、79年『赫い髪の女』、81年『魔性の夏 四谷怪談より』、 89年『出張』(主演)、90年『われに撃つ用意あり』94年『四十七人の刺客』、01年『日本の黒い夏─冤罪』、05年『北の零年』、10年『今度は愛妻家』、11年『大鹿村騒動記』、13年『四十九日のレシピ 』、 14年『紙の月』、16年『団地』、18年『孤狼の血』、19年『半世界』など。

【本作に向けたコメント】

この作品は、撮影スケジュールをとにかくこなす、という事だけでなく、昔僕たちが若い時代に作っていた映画のように、アイデアを出し合ってやれた現場でした。夢を諦めながらも必死にしがみついていく我々世代の大人達の話です。 言ってみれば、“昭和の時代の挽歌”というのでしょうか。 ハードボイルドな作品ではあるのですが、あまりシリアス過ぎると共感を呼ばないので、「あくまで、これは喜劇なのだ」という阪本監督の姿勢には賛成でした。真面目にやればやるほど、ある意味喜劇になるかもしれない、はたまたリアリティとして受けとる人もいるでしょう。共感してくれる人がいてくれたら嬉しいですね。
ハードボイルド映画ですから、撮影中、もっとかっこよく歩きたいな、なんて思うんですが、年なんですね、まっすぐ歩こうとするけど余計によれちゃったりして。笑
映画の基礎を作ってきた70年代の厳しく激しい昭和の映画作りの現場や、80~90年代も経験してきましたが、逆に一番のロマンを作ってきた時代だったな、と感じています。この映画は、お利口さんに生きる事ができず不器用で、でも心情的には熱いものがあって、時代に合わせて生きていく事ができない人間たちの物語です。それが昭和の人間の良さであり、”悪さ”とも思う。
そんな作品になってくれればと思っています。 是非面白がって見て頂けたらと思います。

Cast Interview / Profile
主演:石橋蓮司インタビュー

―久しぶりの主演映画ですね? 石橋 : 最初は冗談かなと思ったんですけれど(笑)、それが現実になって。脚本が丸山昇一さんと聞いて、ハードボイルド・アクションになるのかなと思って、体力的に大丈夫かと。でも本を読ませていただいたら作家の役で、自分の夢みたいなものを時代遅れになろうと貫徹しようとしている男なんですね。そして阪本監督は、この話をあまりシリアスにもっていっても共感が呼べないので、一つの喜劇という形で作り上げようとしていた。その姿勢には賛成できました。それにはこっちが真面目にやればやるほどいいので、変に喜劇的なことをせずに、一所懸命に生きている滑稽さを出せればいいのではないかと思いました。

―主演俳優として現場に臨むときには、何か違うことがありましたか? 石橋 : 主役と言ってもこれは、70年代を生き抜いた人間たちの群像劇だと思っているので。だからあまり主演ということは意識しないで、今回は水先案内人として自分のところからドラマが始まっていくけれども、登場人物全員にドラマがあって、その誰をピックアップしても一つの物語があるわけだから。そういう意味では、この映画はたまたま俺が演じた市川の話だったと。作家である市川を水先案内人にして70年代の残像なり、挽歌なりを映し出していけばいいのかなと思っていました。

―桃井かおりさん、岸部一徳さん、大楠道代さんと同世代の方が共演されていますが? 石橋 : かおりや一徳、道代は身内みたいなもので。今回のメンバーは、原田芳雄という人間のところに集まっていた仲間で、いつも原田邸で顔を合わせていた連中なんですね。だから現場は和気あいあいとしていましたが、演技でぶつかるときもあって、ニコニコしながら「コノヤロー」と思ったり。そういう意味では楽しい緊張感がありました。かおりは彼女が映画デビューした時からの付き合いですけれど、今度は桃井節に付き合って遊びすぎると、ハードボイルドの部分が崩れてしまうしね。そこは気を付けました。一徳は人殺しを依頼してくる極悪人なんだけれど、あいつが言っているとそれが人殺しのことじゃないように聞こえてしまう。そういうリアリティがあって、そこがまたやりやすいんです。道代とは『団地』でも夫婦をやりましたけれど、ぎくしゃくしながら相手の存在を認めていく夫婦で、甘ったるい感じの関係ではないんだけれど、比較的道代は男性的な人ですから。そういう関係性がうまく出せたのかなと思いますね。

―この映画でどんなことが観客に伝わってほしいと思っていますか? 石橋 : この登場人物たちは利口に生きることができない不器用な人間たちで、ただ心情的には熱いものを持っている。時代に合わせて急には変われないところが、昭和の人間の良さであり、悪さであると思うんですが。そんな人間たちを、観る方が面白がってくれればいいなと思っていますね。

大楠 道代 市川 弥生 役

MICHIYO OKUSU

1964年映画『風と樹と空と』でデビュー。66年 大映に入社。同年に『氷点』、『野菊の如き君なりき』、『小さい逃亡者』、67年『痴人の愛』、68 年『セックス・チェック 第二の性』に出演。80年に出演した『ツィゴイネルワイゼン』で、その年の日本アカデミー賞、キネマ旬報個人賞で、助演女優賞を受賞。その後も81年『陽炎座』、87年『親鸞 白い道』、また、阪本順治監督の98年『愚か者 傷だらけの天使』、00年『顔』それぞれで、キネマ旬報個人賞助演女優賞、『顔』はその他にその年の日本アカデミー賞優秀助演女優賞、高崎映画祭助演女優賞、日刊スポーツ映画大賞を受賞した。03年は『座頭市』『赤目四十八瀧心中未遂』の出演により、ブルーリボン賞助演女優賞、毎日映画コンクール女優助演賞、キネマ旬報個人賞助演女優賞など、各映画賞での評価を得る。
その後も、05年『空中庭園』、『春の雪』、08年『ジャージの二人』、10年『人間失格』、11年『大鹿村騒動記』、12年『I’M FLASH!』など。
16年『団地』で、本作同様に石橋蓮司と夫婦役を演じた。

【本作に向けたコメント】

同世代が多い現場で、充実した撮影期間でした。石橋蓮司さんとはプライベートでもご一緒する事が多いのですが、夫婦役としては『団地』以来二回目、いつもと変わらず、とても居心地良く共演させていただきました。皆さん心から楽しんで演じていたので、作品を観る方も絶対に楽しめるものになっていると思います。

岸部 一徳 石田 和行 役

ITTOKU KISHIBE

1947年生まれ。 67年、 GS「ザ・タイガース」のベーシストとしてデビュー 。 75年、 ドラマ「悪魔のようなあいつ」で俳優に転向。カンヌ国際映画祭では審査委員グランプリ受賞『死の棘』(90年)にて、日本アカデミー賞”最優秀主演男優賞”、キネマ旬報”主演男優賞”。 その他出演作に『時をかける少女』(83年)、『お葬式』(83年)、『キネマの天地』(86年)、『僕らはみんな生きている』『教祖誕生』『病院で死ぬということ』(93年)『EAST MEETS WEST』(95年)、『八つ墓村』(96年)『ビリケン』(96年)、『39〜刑法第三十九条』(99年)『鮫肌男と桃尻女』(99年)、『顔』(00年)『真夜中まで』(01年)『助太刀屋助六』(02年)『ゲロッパ!』(03)、『いつか読書する日』(05年)、『火火』(05年)、『寝ずの番』(06年)『フラガール』(06年)『転々』(07年)『GSワンダーランド』(08年)『大阪ハムレット』(09年)、、『必死剣鳥刺し』(10年)『大鹿村騒動記』(11年)、『まほろ駅前多田便利軒』(11年)『天地明察』(12年)『少年H』(13年)『舞妓はレディ』(14年)『FOUJITA』(15年)『団地』(16年)、『アウトレイジ最終章』(17年)『北の桜守』(18年)、『鈴木家の嘘』(18年)など。 テレビドラマでは「相棒」シリーズ、「医龍」シリーズ、ドクターX〜外科医・大門未知子〜シリーズなど。

【本作に向けたコメント】

今回、(石橋)蓮司さんを主役にしてそこに皆が集まりひとつの作品を撮るという話からはじまりました。俳優としての現実的な部分と、夢のようなものを持っているのですが、今回はその夢が実現したような気がします。尊敬する俳優の石橋蓮司さんと、普通ならば主役の人たちが皆集まり脇になって一緒に楽しんで何かをつくろうということはなかなかないことなので、楽しみと緊張感といったものが一緒になってます。僕ら世代が中心になってひとつのものが成立している。蓮司さん世代が真ん中にくるとちょっと何か景色がかわる、そんな感じはあります。

桃井 かおり 玉淀 ひかる 役

KAORI MOMOI

1951年生まれ。文学座付属演劇研究所を経て、71年『愛ふたたび』、石橋蓮司主演の『あらかじめ失われた恋人たちよ』で映画デビュー。77年『幸福の黄色いハンカチ』で日本アカデミー賞助演女優賞をはじめ、その年の映画賞を総ナメにする。79年『もう頬づえはつかない』で、キネマ旬報賞・主演女優賞、毎日映画コンクール・女優演技賞など多数受賞。88年『TOMORROW/明日』ではキネマ旬報の主演女優賞、97年『東京夜曲』でブルーリボン賞、毎日映画コンクールなどで主演女優賞をはじめ数多くの賞を受賞。そのほか主な出演作は75年『僕は天使ぢゃないよ』、80年『夕暮まで』、82年『疑惑』、85年『生きてみたいもう一度 新宿バス放火事件』、88年『木村家の人びと』、98年『大怪獣東京に現わる』、00年『異邦人たち』、04年『IZO』など。また、05年『太陽』、ハリウッド大作『SAYURI』、08年『イエロー・ハンカチーフ』、10年『雨夜 香港コンフィデンシャル』、14年『Oh Lucy!』、15年『Greater Things』(イギリス)、16年『Tales of Mexico』(メキシコ)、『フクシマ・モナムール」(ドイツ)、07年『ゴースト・イン・ザ・シェル』など、海外作品にも数多く起用されている。06年には、自ら脚本を手がけた初監督作品『無花果の顔』を発表。世界11の国際映画祭に正式招待され、ベルリン国際映画祭のNETPAC賞を含め7つの賞を取得。16年に公開された監督第2作『火 Hee』は、ベルリン映画祭、香港映画祭、ウラジオストク国際映画祭、サンパウロ映画祭など世界各国の映画祭で上映されている。

【本作に向けたコメント】

私が以前監督に「石橋蓮司を主演で映画を一本撮ってね」と言ったことが、この企画の立ち上がりのキッカケのひとつだったという事で、今回は、「断れないよね?」という出演交渉だったんです(笑)。初めて阪本組に参加したんですけど、撮影前は一番私が緊張していたと思います。でも、今回は蓮司さんはじめ、とても仲の良い方々との共演という事で、今までの作品で一番緊張しなかった作品になったかもしれない(笑)。私が一番最初に芝居をした時の映画(『あらかじめ失われた恋人たちよ』(71年))で主演が蓮司さんだった事もあり、石橋蓮司という俳優の背中を見て生きてきた訳です。蓮司さんは頭が良くて、面白くて、鋭いのにかわいくて。しばらく普通の人間がつまらなく感じるくらい"世界で一番しゃれた男”だと思っています。
阪本監督は、非常に合理的で、簡潔で、柔軟で、スタッフもみんなアイデアを出せる現場。もう楽しい限りでしたね。俳優陣皆さんが、無条件に阪本組に参加しているという関係性が素晴らしいです。こんなに美しい関係を築いている日本映画は見たことないです。とても贅沢な映画に参加したと感じてます。

佐藤 浩市

KOICHI SATO

佐藤 浩市 児玉 道夫 役

豊川 悦司

ETSUSHI TOYOKAWA

豊川 悦司 周 雄 役

江口 洋介

YOSUKE EGUCHI

江口 洋介 守山 秀平 役

SATOSHI TSUMABUKI

妻夫木 聡 今西 友也 役

新崎 人生

JINSEI SHINZAKI

新崎 人生 ポパイ/南雲 雄平 役

井上 真央

MAO INOUE

井上 真央 福原 歌留多 役

柄本 明

AKIRA EMOTO

柄本 明 連城 孝志 役

寛 一 郎

KANICHIROU

寛 一 郎 五木 要 役

前田 亜季

AKI MAEDA

前田 亜季 中道 亜美 役

渋川 清彦

SHIBUKAWA KIYOHIKO

渋川 清彦 西浜 雄大 役

TAKEHIKO ONO

小野 武彦 若山 得安 役

柄本 佑

TASUKU EMOTO

柄本 佑 植田 順 役

公開中